穴狙い 2/2
かつて早稲田の空手部で、三井物産に就職した先輩たいました。(私は早稲田時代は空手にあけくれていまいした。授業より空手をするために大学に通っているような時期もありました。)
先輩といっても私よりも年齢はずっと下でしたが、大変まじめで、誠実で優秀な先輩でした。私が入部していた空手部は、フルコンタクトといって寸止めではなく直接相手に当てるルールで、最も実践的な流派の一つでした。黒帯までいけるのが、入門者200人に一人ぐらいだといわれていました(ちょっとオーバー)。 学生も卒業までに黒帯までいけたらいいほうで、その先輩は卒業時には黒帯をとっていました。
私がその空手部に入って最初の審査会(昇給、 昇段試験)で、その先輩の10人組み手を見ました。黒帯を与える審査に10人組み手があります。その10人組み手を初めて見たときの衝撃は今も鮮明に残っています。(4年後には私も経験しました) その先輩は細身で背丈は普通です。決してフルコンタクト空手に向いている体ではありません。先輩は打ちのめされて、何回もノックダウンされていました。普通ならKOで試合が終わるか、ドクターストップです。しかし先輩はそのたびに起き上がり相手に向かっていきました。ものすごい闘志です。ふだんの物静かで誠実な先輩からは想像もつきませんでした。
三井物産くらいの人気企業は、早稲田からでも簡単 に就職できものではありません。先輩の大学での優秀な成績とその人柄が評価されたからでしょう。先輩は政経学部政治学科でした。今でもそうかもしれませんが、そのころは私立大学では最難関でした。いわゆる先輩は勝ち組です。その上一流企業に就職したのです。先輩がタイに赴任が決まった時、「日本の侍として、がんばってきます」、という年賀状をいただいた時には、さすが先輩すごいなあーと思ったものです。
しかし先輩が三井物産に就職すると決まったとき、三井物産で働くのも大変だなあと思いました。あの先輩のような優秀な人ばかりいるところならば、みんなおちおしていられないと思ったからです。自分を鍛えるには適切な場所でしょうが、もっと楽にもっとたくさん稼ぐ道もあるのではないかと考えてしまったのです。
入学試験も真正面から突破するのが王道です。とりあえずそのつもりで皆さんは学力をつけなければいけません。しかし実際志望校に入る道は様々です。そこには思いもよらい穴があるかもしれません。だからいつも頭を柔軟にしておいて、すぐにでも対応できるようにしておいてください。このことは入学試験に限らず人生を生きていく上でも忘れてならないことだと思います。