叔父の戦場での勉強 3
引き続き第二次大戦に従軍した叔父の話です。叔父の部隊は戦闘に強く、数々の武勲を立てましたが、それは叔父の指揮作戦が優れていただけでなく、優秀な部下がいたからです。部下も最初から優秀だったというわけでなく、叔父が部下を優秀な軍人に育てたなのです。また部下との信頼関係も戦場では重要です。指揮官として戦場では命を落とすかもしれない命令を部下に下さなければならないこも多くあったでしょう。そのときにこの隊長のためなら命を棄ててもおしくないと、どれだけ部下が思っているかが重要です。叔父は93歳で他界しましたが、葬式の席にはかつての部下である兵隊さんが、何人か出席していました。みなさんもう90歳前後のご高齢でした。葬式のときにその方々よりお聞きしたのですが、堀口隊長(叔父)は温情も厚かったし、ほかの部隊とは全然ちがっていたと話していました。そのことを聞いて、子孫である私は大変誇らしく感じました。私にもその血が流れている、それに恥じないように生きなければならないと矜持を正したものでした。
私は教育の根幹はここにあると思います。日本には立派な先輩方がたくさんいらっしゃいます。ただ頭がよくて勉強ができるだけではその人は不幸です。その能力を持って世の中にどれだけ貢献できるかが重要になるのではないでしょうか。世の中にどれだけ貢献できたかがその人が生きてきたことの証で、その人の幸福感につながるのではないでしょうか。今ここでは世の中の貢献度と少し大げさに言いましたが、家族や身近な人の役に立つのことも同じです。またこれはあくまでたとえですが、一生ドアノブだけを作り続けていた人がいたとしましょう。その人はドアノブを使う人がどれだけ気持ちよく、しかも効率的にそのドアノブを使ってくれるかを想像して、すぐれたドアノブを作り続けるのです。世の中の仕事はすべてどこかで人のお役に立っています。そこを通じて、仕事を通じて世の中や世界に貢献し、ちょっとおおげさな言い方をすれば、それを通じて宇宙と会話するのです。親は勉強しろと子供を攻め立てる前に、親の仕事がどれだけ人の世のためになっているかを話して聞かせるべきです。そうすれば親に対する尊敬の念も生まれるだろうし、引きこもりなる子供も少なくなるでしょう。勉強に対する意義も感じてくれるようになるでしょう。
話がとりとめのない方向に行ってしまいそうなので元に戻します。勉強のモチベーションを上げるために、私たちの偉大な先輩の伝記を読むのをお勧めします。日本にはあまり知られていない偉大な先輩がたくさんいらっしゃいます。それが身近な人でなくても問題ありません。多分イチロー選手やサッカーの仲田のようなスポーツ選手にあこがれた受験生も多いと思います。彼らも偉大ですが、そのほかにもたくさん偉大な人はたくさんいます。戦後の教育では過去の偉人に触れる授業がほとんどなくなってしまいました。そういう偉人に読書を通じて接することで憧れをいだき、心の背筋がピントのび、生きることの意味がわかり出し、勉強に対する意欲も沸いてきます。