塾
近頃は塾に通うことは特別なことではなくなっています。中学3年にもなると東京などの都市部ではほとんどの生徒が塾に通っています。学校があり義務教育で全員が学校に通っていて、一日の多くの時間を学校で勉強しているのだから、さらに塾に行って勉強する必要は、本来ならないはずです。そうでないと何のための学校かということになってしまいます。
私が子供のころから学習塾もありましたが、学習塾以外に習字の塾や絵画教室など直接勉強と関係ない塾がはやっていました。「読み書きそろばん」という江戸時代からの庶民のたしなみという伝統からか、そろばん教室もはやっていました。私の世代ではそろばん塾に通った経験のない人はむしろ少ないのではないかと思います。また私の父親は画家で大学で美術の先生をしていたこともあって、私の家では絵の教室(塾)を開いていました。なんの宣伝もしていませんでしたが、口コミで多いときは100人近くの生徒が集まっていたようです。最初の生徒も絵を教えてくださいと向こうから来たそうです。当時は児童画教室に小学生を通わせることが流行でした。先日小学校の同窓会がありましたが、うちの家に通っていたという同級生が多くいたのに驚きました。そのころから「受験地獄」と言う言葉がありましたが、直接受験とは関係のない絵画教室が流行するなど、なんと優雅な時代だったと思ってしまいます。私の育った大阪の中心地でも、中学受験はごく一部のお金持ちのものでした。
塾は学校ではカバーしきれないとことろをカバーするのものです。なのでその中に数学や英語を教える一般的な学習塾があってもしかるべきでしょうが、スポーツやピアノなどの学校の勉強とは直関係のないことを学ぶところが塾の本来の姿だと思います。塾を運営している私が言うのもなんですが、教養を高める塾ではなく学習塾だけが興隆する世の中はあまり望ましくないことだと私は思います。