夢は実現する?(後編)
青山千春博士が発見したメタンハイトレートという天然ガスの地下資源は、今表層に出ているものだけでも、少なく見積もって日本が消費するメタンガスの 100年分以上あります。それだけでなくガスは次から次へと噴出していて、その本当の埋蔵量は特定できません。ひょっとするとほぼ無尽蔵にあるかもしれま せん。しかも日本海側にあるメタンハイトレートは、混じりけがないので低コストで取り出すことができます。千春博士の見つけたメタンハイトレートは日本海 側に埋蔵していますが、太平洋側にもメタンハイトレートがあります。しかし太平洋側のメタンは海底の地中に埋もれていて土と混じっています。なので取り出 すのにコストがかかり、採算がとれません。
本来このような地下資源の調査研究は国家がすることです。メタンハイトレートが取り出しやすい 形で存在することがわかれば、あとは国がリードするものです。実用化までの道筋をつけるのは国家の仕事です。なのに国は動こうとせず、それどころか妨害ま でしてきました。採算がとれそうにない太平洋側の調査研究には莫大な予算をつけるのに日本海側にはほとんど予算をつけません。なぜでしょう?みなさんには 信じられないかもしれませんが、日本が資源小国であることで利益を得ている人たちがたくさんいるからなのです。
そこで千春博士やその夫の 青山繁晴氏が、莫大な借金をして自費で調査を進めています。魚群探知機でメタンハイトレートを見つける方法を考え出したのは千春博士です。その技術は特許 です。しかし特許は取っていますが、特許料は1円たりとも取っていません。もし特許料をとれば莫大な資金が手に入るでしょう。しかしこの資源は人類全体の ものだという理由で特許料をとらないのです。彼らはメタンハイトレートの調査のために莫大な個人借金をしているのにもかかわらずです。
み なさんはこの青山夫妻の志の高さ、魂の高潔さが理解できるでしょうか?日本がかつて負けるとわかっている戦争に突入した一番の理由は、日本に資源がなかっ たからです。日本と戦った米国のトップ、マッカーサーも米国の国会で証言しています。「日本が戦争に突入したのは主として安全保障のためだ、なぜなら日本 には資源がないからだ。」 と。資源さえあれば日本は負けるとわかっている戦争をしなくてよかった。今戦後初めて日本独自の資源があることがわかった。そ の資源採取に先鞭をつけるときに、よこしまな思いがあってはならないというのです。
神のいたずらか、千春博士の入学を拒否した東京商船大 学と、受け入れてくれた東京水産大学は統合して、今度東京海洋大学になりました。その海洋大学に資源を調査する学部が新設され、あらたに教官を募集するこ とになり青山千春博士が採用されました。一応教官は公募でですが公募は形式的で、こういう場合はたいてい最初から採用する人か決まっています。千春博士も 最初は不採用でしたが、海洋大学にも良心的な人がいて、その人が彼女ほどこの役にふさわしい人がいないのではないかと強く押してくれてたようです。
青山千春博士は還暦を過ぎて本当に夢を実現しました。しかしそれがかなったのは、志を高く持ち、日本やアジア人類のために、なんの混じりけもない気持ちで、命がけでまっすぐ彼女が生きてきたからです。その彼女の生き方や姿勢に天が感応してご褒美を下さったのです。