ほとんどの国語の教科書に夏目漱石の「こころ」という小説が採用されています。その感想文の宿題をうちの塾生も書いていました。
実はある事件が漱石がこの小説を書くきっかけになっています。その事件とは、陸軍元帥乃木希典(のぎまれすけ)が明治天皇の崩御(死ぬこと)の後を追って殉死(自決)したことです。このことに衝撃を受け、そのことがきっかけとなり、漱石はこの小説を書きました。
他にも芥川龍之介など多くの作家が、この事件に衝撃を受けたことを書いています。ただそのころまだ若かった作家の武者小路実篤は、この殉死を批判しています。希典本人だけが自決するならまだわかるが、そのつれあいまでみちづれすることはなかろうと。しかし若い武者小路実篤には、この明治の精神というものが理解できなかったのでしょう。あるいは理解したくなかったのかもしれません。今このブログを読まれている方も、おそらく理解することは難しいでしょう。平成の今の世に、天皇の後を追って自ら死を選ぶということなど考えれらないことでしょうから。
この事件を最後に明治が終わったと言われていますが、精神史としての明治時代を理解するには重要なできごとです。 (つづく)