このようにしてその国のライフラインまでもが、グローバル資本の傘下に入っていくのです。EUは経済的合理性を求めて統一したはずです。その第一の恩恵は、普通の市民の所得が増えるという形で、EUの住民が享受すべきものです。しかし現実はどうでしょうか。ギリシャやスペインは失業率を見るまでもなく、国民の利益にはなっていません。また一人勝ちのドイツですら、労働者の賃金は上がっていません。安い労働力が他国から流入してくるからです。
結局だれが利益を得ているのでしょうか。利益を得ているのはグローバル大企業だけです。そしてそこに出資している一部の金持ちだけが、さらに金持ちになっていっているのです。
EUはもともと安全保障を求める歴史的な渇望が、統一を進めるエネルギーになりました。そしてその建前は、経済の効率化によって競争力をつけ、裕福になることでした。しかし一部の企業や資本家が利益を受けただけで、個人でも国家間でも貧富の格差が拡大し、今のところそれを埋める手段がありません。このままでは格差は拡大する一方です。
ギリシャやスペインが経済危機から抜け出すには、結局EUから離脱するしか方法がないでしょう。通貨をドラクロアに戻し、それによって通貨安の恩恵を受け、貿易赤字を減少させる。また水道などの公共資産は、ギリシャ政府がしっかり管理する。ユーロ建てでない自国通貨による国債を発行して、公共事業や減税をして内需を喚起する。これらによって経済成長率をあげ、不況から脱出するしかありません。
もう一つの解決策は、ドイツがギリシャやスペインを直接救済することです。ドイツがギリシャやスペインにお金を渡すのです。しかしこれは先ほど言ったように、ドイツ人の同意を得ることはまず不可能です。これがドイツ国内での所得の移転ならば、問題にならないでしょう。